研究課題/領域番号 |
12671699
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 春樹 新潟大学, 医学部, 教授 (40018875)
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研究分担者 |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
白柏 基宏 新潟大学, 医学部・附属病院, 講師 (50242417)
福地 健郎 新潟大学, 医学部・附属病院, 助手 (90240770)
山本 格 新潟大学, 医学部, 教授 (30092737)
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キーワード | NMDA受容体 / グルタミン酸 / ノックアウトマウス / 虚血・再灌流モデル / 神経節細胞 / 網膜 / ε1サブユニット / ε2サブユニット |
研究概要 |
興奮性アミノ酸であるグルタミン酸と、高いカルシウム透過性を持つNMDA型グルタミン酸受容体が緑内障眼における網膜神経節細胞の消失に関与していることを直接明らかにするために、この受容体を構成するサブユニットを遺伝子的にノックアウトしたマウスを用いて虚血・再灌流モデルを作製した。網膜、特に神経節細胞にはε1、ε2及びζ1サブユニットが発現している。全身麻酔を施したε1サブユニットノックアウトマウスを固定し、その片眼の前房内に刺入した針より約120mmHgの眼圧を負荷した。1時間後に負荷を解除し、3,7,14日後に網膜の組織学的変化を評価した。対照として、遺伝子背景を同一にする野生型マウスを用いた。その結果、ε1サブユニットノックアウトマウスは野生型マウスに対して、有意に神経節細胞が保護されていた。次に、ε2サブユニットノックアウトマウスに対して同様の実験を行った。しかし、ε2サブユニットは完全に発現が消失すると生後24時間以内に死亡してしまう為、発現量が半減するヘテロタイプのノックアウトマウスを用いた。対照として、ε1サブユニットのヘテロタイプのノックアウトマウス及び野生型マウスを用いた。その結果、ε2サブユニットノックアウトマウスは、野生型マウスより神経節細胞の保護効果が認められたが、ε1サブユニットノックアウトマウスよりは明らかに保護作用が減弱していた。また、ε1サブユニットにおいても、発現が半量残っているヘテロタイプでは完全にノックアウトした群に比して保護作用が減少していた。以上のことから、少なくとも、虚血・再灌流モデルにおける網膜神経節細胞死の過程でNMDA型受容体のε1サブユニットが重要な役割を果たしていることが明らかになった。現在、ε1サブユニットの選択的阻害剤は存在しないが、その開発により将来的に緑内障における網膜神経細胞の保護への臨床応用の可能性が見込まれる。
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