先天性上斜筋麻痺と臨床的に診断された症例を、MRIを用いて検討した。上斜筋に萎縮のある群は、ない群にくらべて、垂直・水平偏位が多く、また、手術回数が多いこと、術後の立体視には両者の間で差がないものの、手術対象となった眼筋の数には有意差が認められた。手術方針決定のためのアルゴリズムを提案し、それに従って手術を行った結果、手術回数が以前に比べ、有意に減少した。さらに上斜筋の萎縮のある群の患眼は健眼に比べて乱視の頻度が高く、弱視治療の必要性も高いことが判明した。先天性上斜筋麻痺の形成不全については、上斜筋牽引試験が画像診断と相関することおよび上斜筋腱の牽引試験が検者の先入観に左右されることなく普遍的であることを示した。 上斜筋の低形成の原因として眼窩の発育異常との関係が考えられる。眼窩の発育異常の有無と上斜筋低形成の関係を、顔面のX線計測とMRIとを比較することによって検討した。その結果眼窩の形成異常は上斜筋形成に影響を及ぼす原因であるというよりは、長期間の異常頭位の結果であると推測された。 一方、斜視手術が眼筋の解剖学的位置変化に及ぼす影響については、外直筋切除法を行った後の眼球運動の画像解析を行い、眼球と眼筋をつなぐ結合組織の存在を示した。 外眼筋移動手術が眼球運動に与える影響については、360°網膜切開中心窩移動術を受けた症例で術後複視を訴える患者を対象に反対方向への眼球回旋手術を行い、術前・術後のMRIによって眼筋の位置を検討した。10°〜35°の眼球回旋を起こす外眼筋移動手術にも関わらず、眼筋の位置は眼球後方ではほとんど変化がみられず、眼球赤道面付近において位置の変化が見られるにすぎなかった。これは眼窩内pulleyによって外眼筋の位置が堅固に固定されていることを証明し、pulley理論の裏付けとなる重要な所見である。
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