ウイスターラットの網膜-外側膝状体間を、末梢神経片によって良好に架橋移植するため、以下の実験を併行して行い研究計画を進展させた。 (1)切断視神経への末梢神経移植手技の確立:Vidal-Sanzら(1987)およびInoueら(2000)の方法に従って、眼窩内で視神経を切断し、切断端へ総腓骨神経片4cmを自家移植した。移植3か月後に軸索再生した網膜神経節細胞の数を移植神経片への逆行性標識によって評価したところ、H12年度内に200個から2300個にまで増加した。この数値はVidal-Sanzらが報告した数%の軸索再生率に達したことを示し、末梢神経移植手技が確立したと判断した。 (2)外側膝状体への末梢神経片の挿入部位の検討:Carterら(1997)のアプローチに従って、大脳を一部吸引除去し視床の外尾側を露出した。外側膝状体へ向かって内吻側方向へ移植神経片の一端を挿入した。数日後脳切片を作成し、移植神経片の先端が外側膝状体の尾側端に達しているかどうか観察した。こうして、脳のどの部位から移植神経片を挿入すれば良いのかを決定した。 この過程を経て、(1・2)の手技を同時に用いた架橋移植を、ラットに適用するという段階に達した。
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