本研究の目的は、網膜-外側膝状体間の架橋移植ラットを作成し、6か月以上の生存期間を設けたのち、再構築した外側膝状体系視覚伝導路の機能回復を証明することであった。そこで、平成12年度に確立した方法に従って、引き続き網膜-外側膝状体間の架橋移植ラットを作成してきた。この方法によって、架橋移植された移植神経片は、大脳皮質の後頭葉の外側から内吻側へ設けた空洞を経て、外側膝状体の前後軸のほぼ中央部へ確実に留置されることを、我々は確かめた。しかし、移植を終了した動物のほぼ全数で、頚部の位置異常(回転)および異常運動(架橋側への回転)が恒常的に生じるという問題が生じてきた。さらに、その半分以上の動物が衰弱→安楽死という転帰をたどったため、数カ月後に視機能を評価するという計画の遂行が困難になってきた。そこで、以下に述べるように、架橋移植手術の方法の改良を試みた。 1)Carterら(1997)によって記述されている外尾側から内吻側方向への斜方向のアプローチを変更し、一旦大脳皮質を前額断面に平行に外尾側から内側ヘアプローチし、皮質下脳中枢へ達した後、次に吻側方向へ進むことにした。 2)外側膝状体の前後軸中央から吻側までを露出せず、その尾側端の露出でアプローチを終了し、そこへ、末梢神経片の一端を挿入した。 この修正法により、架橋移植手術後の経過が良好な動物を作製できるようになった。今後引き続いて架橋移植動物を増やし、その視機能評価を行う予定である。
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