RAD51Bは神経系で発現が見られるゲノム安定化保持因子であり、遺伝子損傷修復に関与が予測されている。 1.Rad51Bコンデショナルノックアウトマウスの作成 Rad51Bのノックアウトマウスは胎生初期に死亡することが報告されたため、発生後のRad51Bの機能をin vivoで検討するためには時期または臓器特異的なノックアウトを行うこととした。 まず、Cre-lox Pシステムを用いたターゲッテイングベクターを作成した。同時にRad51B遺伝子が切り取られるとGFP(green fluorecein protein)が発現しノックアウトされたことが確認されるシステムになっている。 このベクターをマウスのES細胞(胚性幹細胞)に導入したところ、139クローンの遺伝子導入されたマウスES細胞が得られ、このうちに1クローンにノックアウトマウス作成に必要な相同組換えが起こっていることが確認された。 2.Rad51Bノックアウト細胞における細胞生存能、増殖能の検討 哺乳類のin vivoにおける機能を細胞レベルで見るためにマウスES細胞のRad51Bをノックアウトし細胞の生存や細胞死の有無、遺伝子損傷に対する感受性を調べることにした。1対の染色体遺伝子のうち片方のアリルをハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んだRad51Bノックアウトベクターで、もう一方のアリルをネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだコンデショナルノックアウトベクターでつぶす予定である。この細胞が得られ実験操作に堪えるものであれば、神経細胞や血管内皮細胞に分化誘導することができるはずである。現在、マウスES細胞に導入中である。 3.Rad51Bの細胞増殖における機能の検討 子宮筋腫においてRad51Bの異常が報告されておりRad51Bを強制発現するベクターを作成し、NIH3T3細胞(マウス線維芽細胞)に導入した。この細胞をヌードマウスの皮下に注入したところRad51BのN末端のみを強制発現したもので腫瘍形成が観察された。Rad51Bの全長を強制発現したものは細胞死が観察された。今回実験に用いたのは線維芽細胞だが、平滑筋細胞においてもRad51Bが細胞周期に影響する同様の機能を持つことが予測される。
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