研究概要 |
ロドプシンやIRBP、アレスチンといった網膜特異的蛋白の遺伝子のプロモーター部位にはPCE-1領域(CAATTAA/G)とOTX領域(TGATTAA)というシスエレメントが存在しており、OTX領域にはCRXとよばれるホメオボックス型転写因子が結合することが知られていた。我々の一連の研究は、PCE-1領域に結合する転写因子を同定し、網膜特異的遺伝子の発現にそれらがいかに関わりあっているかを検討することにあった。我々はまずPCE-1領域をプローブにしてサウスウェスタン法にて、RXと呼ばれるホメオボックス遺伝子を同定した。次に抗RX抗体を用いて、ウェスタンブロット法と免疫染色法を行い、RXが網膜特異的に存在し、網膜視細胞層以外にも内顆粒層や神経節細胞層など網膜全体に存在することを示した。さらにEMSA法にてRXがPCE-1領域に結合するのを確認した。また変異をつけたプローブによるEMSA法にて、RXとCRXという似通った転写因子が結合領域のコア(ATTAA)の前の2塩基対(CAかTG)によって結合特異性が違ってくることを明らかにした。次いで我々はCATアッセイにてRX, CRXによる綱膜特異的遺伝子のプロモーターの転写調節活性を調べた。RXもCRXもアレスチンやIRBPプロモーター活性を量依存的に増加させた。それに対しアレスチンプロモーターのPCE-1領域のみに変異をつけるとRXによる活性のみが低下した。さらにRX, CRXの領域特異的なプロモーター活性をみるため、PCE-1とOTXをつないだCAT遺伝子を作成し、RX, CRXを導入して実験を行ったところ、PCE-1ではRXのみが、OTXではCRXのみが活性を増加させた。これらのことから、網膜特異的遺伝子の発現にはPCE-1とOTX領域が必要であり、それぞれRX、CRXという転写因子が領域特異的に結合し、活性化していることが明らかにされた。
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