Tet-On遺伝子発現システムを用い、2種類のトランスジェニック・マウスを作成した。すなわち、ロドプシン/Tet-Onトランスジェニック・マウスおよびTRE/VEGFトランスジェニック・マウスである。Tet-Onトランスジェニック・マウスとは、発現部位を決めるプロモーター(本研究では網膜特異的なロドプシン・プロモーター)の下流にrtTA遺伝子(reverse Tet-controlled transactivator)を連結した人工の遺伝子を導入したもの。TRE/VEGFトランスジェニック・マウスとは、TRE遺伝子(Ttresponsivc element)の下流にVEGF遺伝子を連結したもの。この2種が確立した後に、この2種をかけあわせ、両方の導入遺伝子を持つダブル・トランスジェニック・マウスを確立した。得られたダブル・トランスジェニック・マウスでは、網膜にrtTAが発現しており、Tet(テトラサイクリン)のない環境ではVEGFが発現するスイッチは入っていないが、Tetを与えることによりTetがTRE部位に連合して、これを活性化し、その下流にあるVEGFの発現を促すことになる。得られたダブル・トランスジェニック・マウスの解析を現在進めているところであるが、われわれのこれまでの研究結果から、網膜の深層血管より、網膜下にのびる新生血管網がVEGFの発現を促された後に伸びてくるという結果が予想される。これは、成人の網膜におこる血管新生性の疾患、すなわち糖尿病網膜症や加齢性黄斑変性症の有用な疾患モデルとなると考えられる。現在までの解析では予想どおりの結果が得られている。
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