研究概要 |
平成12年度はベーチェット病患者の遷延性炎症病態の解析と抗TNF-alpha抗体治療をおこなった.使用した抗体はヒト-マウスキメラ型モノクローナル抗体infliximabで,網膜ぶどう膜炎を有するベーチェット病患者でシクロスポリン治療の効果が不十分,あるいは副作用により投与が不可能になった症例を対象とした.投与量は1回あたり5mg/kgを0週,2週,6週,10週の4回点滴静注し,臨床症状により判定する有効性と副作用について検討した.また期間中,投与前,投与後1週,4週の時点で末梢血よりリンパ球を分離しTNF-alpha,IIFN-garnma,L-4のサイトカインmRNAおよびCaspase8の測定,細胞内サイトカイン染色によるTh1/Th2比の解析をおこなった.ぶどう膜炎の発作は投与開始後に軽快し,霧視などの眼科的自覚症状,あるいは口内炎などの全身症状も著しく改善した.一方副作用については投与を中止する必要のあった重篤な例はなかったが,抗ds-DNA抗体の上昇がみられた.また,試験後全例ぶどう膜炎の発作を再発するようになった.サイトカイン等の測定結果は現在解析中である.以上の結果より本薬物のベーチェット病のぶとう膜炎に対する有効性は強く期待できる.しかし免疫系に与える影響の広がりについては十分確認されていない.このため今後の注意深い経過観察が必要と思われる.また本抗体の効果は2か月程度持続し,その後炎症病態は再活性化するものと考えられる.薬物の体内の半減期は151-246時間とされている.しかし炎症の抑制効果はこの期間を越えてみられたことから本病の炎症病態の形成は単一のサイトカイン,あるいは特定の細胞によるものではなく,複数のサイトカインや免疫応答細胞による相互作用と増強効果の結果と思われるものの,TNF-alphaがその中心に近い役割を担っているものと推測される
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