研究概要 |
眼組織および眼病変における「がん抑制遺伝子」と「がん遺伝子」の研究をすすめている。 がん抑制遺伝子の研究として網膜芽細胞腫患者さんの遺伝子異常の検索は引き続き行っている。p53遺伝子に関しては、翼状片では従来の報告と異なり、我々の検査では本遺伝子は関与していない結果となっている。扁平上皮癌、基底細胞癌、皮脂腺癌などの悪性腫瘍ではp53は関与していた。 がん遺伝子のc-fos、c-junの発現をマウスやラットの胎生期の角膜や水晶体で研究し、さらに眼外傷での創傷治癒過程でも、それらの役割を検討している。また、c-fosノックアウトマウスでのデスモゾームやケラチン12の異常を調べ、創傷治癒過程での影響をみている。 眼悪性腫瘍の治療として光線力学療法を我々は世界に先駆けて行ったが、その作用機序の解明を引き続き行い(Ohnishi, et al. Med Electron Micros 2002)、アポトーシスの関与を検討している。 腫瘍などの細胞増殖機構の研究を行うなかで、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)の関与が重要であるので、TGFβ-Smad系の研究を行っている(Saika, et al. Br J Ophthalmol 2002)。またTGFβreceptor type IIが網膜神経膠細胞の増殖を抑制する機構に関与しているので、アデノビールスを用いた遺伝子操作で研究している(Hisatomi, et al, Laborat Invest 2002)。 眼部腫瘍の動物実験モデルを作製した。XPCノックアウトマウスに9、10-dimethyl-1、2-benzanthraceneを毎日6週間点眼することにより眼瞼に乳頭腫を発生させた。これが悪性化するか否かも検討しているが、この腫瘍でのTGFβRIIやSmad3の関与を調べている。この腫瘍にアデノウィルスベクターを用いて遺伝子導入を行い腫瘍増殖抑制効果を検討している。
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