眼組織および眼病変における「がん抑制遺伝子」と「がん遺伝子」の研究をすすめている。 がん抑制遺伝子の研究として網膜芽細胞腫患者さんの遺伝子異常の検索を行っているが、13番染色体の長腕のq1、4部のエクソンの一部に異常があるのが認められた。p53遺伝子に関しては翼状片で従来の報告と異なり、我々の検査では本遺伝子は関与していない結果となった。眼瞼皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、皮脂腺癌などの悪性腫瘍ではp53は関与していた。 がん遺伝子のc-fos、c-junの発現をマウスやラットの胎生期の角膜や水晶体で研究し、胎生期中期に発現し生後まもなく消失することが判明した。角膜や水晶体の創傷治癒過程においてもc-fos、c-junは早期に出現していた。またc-fosノックアウトマウスでのデスモゾームやケラチン12の異常を調べ、その異常が創傷治癒過程に影響していると考えられた。 腫瘍などの細胞増殖機構の研究を行うなかで、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)の関与が重要であるので、TGFβ-Smad系の研究を行った。この研究を発展させるために、遺伝子導入の研究を虹彩で行った。LacZ遺伝子をアデノビールスベクターを用いて虹彩の括約筋へ導入することに成功した。これと同様の技法を用いて、TGFβ receptor typeIIが網膜神経膠細胞の増殖を抑制する機構に関与していることを証明した。 眼部腫瘍の動物実験モデルを作製した。XPCノックアウトマウスに9、10-dimethyl-1、2-benzanthraceneを毎日6週間点眼することにより眼瞼に乳頭腫を発生させた。これが悪性化するか否かも検討しているが、この腫瘍でのTGFβRIIやSmad3の関与を調べている。この腫瘍にアデノウィルスベクターを用いて遺伝子導入を行い腫瘍増殖抑制効果を検討している。
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