研究概要 |
Vogt-小柳-原田病(原田病)は、ぶどう膜、皮膚、脈絡叢、内耳などの色素細胞の存在する部位に炎症をきたす全身性疾患で、色素細胞に対するクラスII MHC (HLA-DRB1*0405)が関与する自己免疫疾患と考えられているが、その発症機構は未だ解明されていない。そこで我々は、原田病の発症機序及び本疾患の遷延化、慢性化に至るメカニズムを解明するために、原田病特異的T細胞が存在すると考えられる原田病患者の髄液からT細胞を樹立し、既にメラノーマ抗原として単離されたメラノソーム蛋白(tyrosinase, MART-1,gp100,TRP1,TRP2など)や現在メラノーマ抗原候補として単離された各種色素細胞特異的蛋白遺伝子などを組み込んだレトロウイルス用いて、原田病におけるT細胞認識自己抗原の同定を試みた。 初発活動期の原田病患者の髄液よりリンパ球を分離し、限界希釈法にて培養し、原田病髄液由来T細胞クローンを樹立した。患者23例中3例から合計61クローンが樹立された。その内1例から得られた24クローンがメラノーマ細胞(Skmel23)の溶解物に対して特異的にHLA-DRB1*0405拘束性に反応した。更にHLA-DRB1*0405遺伝子を導入した293IMDR1及び293CIITA細胞に各種色素細胞特異的蛋白遺伝子を組み込んだレトロウイルスを導入し抗原提示細胞として検討したところ新規メラノーマ抗原KU-MEL-1遺伝子導入細胞に対してHLA-DRB1*0405拘束性に反応性を認めた。またKU-MEL-1に対する原田病患者血清中のIgG抗体の存在を調べたところ、26例中15例(58%)で認められた。 以上の結果より原田病患者においてKU-MEL-1分子が特異的自己抗原として認識されている可能性が示唆された、今後原田病の発症及び病状との関連性についてさらに検討していく予定である。
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