変視症は黄斑部における視細胞や、視細胞外節の配列の乱れにより発生すると考えられる症状で、黄斑疾患の早期発見、経過観察のみならず患者の日常生活における視覚の質にかかわる極めて重要な臨床症状である。我々は変視症を有する症例の臨床研究において、この直線を間隔の狭い点線から徐々に間隔の広い点線に変えることにより次第に被検者は変視を自覚しなくなることを見出した。そしてこの現象を応用することにより、非常に簡便に変視量が定量化可能であることが判明し、この現象を応用し(株)イナミと共同で新しい変視表M-CHARTSを開発した。 変視症を有する疾患は様々あるが、その中の黄斑前膜についてその一年以上の自然経過と変視量との関係を検討した。黄斑前膜が進行する際には黄斑前膜により網膜が水平方向、垂直方向に収縮すると考え、その際に変位する網膜血管の移動を黄斑前膜の変化と捉えた。眼底写真において、黄斑から上下左右10度内を16領域にわけ、視神経乳頭と脈絡膜血管を基準に黄斑前膜の経過に伴い移動した網膜血管の実際の移動量を測定し、変視量との関係を調べた。この経過期間中、視力より変視量の変化のほうが多かった。また10領域内における実際の網膜血管の移動量の合計を、0から1mm、2から3mm、4mm以上と三群に分けたところ網膜血管の移動量が多いほど変視量の変化も大きかった。このことからこの変視表は黄斑前膜の経過をより鋭敏に反映していると考えられた。一方ではコンピュータを用いこの変視表をそのままモニター上で再現し、実際の変視表とモニターによる定量の値に差がないかを臨床的に検討している。また、背景が白色に黒色の検査指標の場合と背景が黒色に検査指標が白色の場合とで変視量に差が生じるかどうかも比較検討している。これらのモニター上で行う際には固視監視モニターを導入し被検者の固視について観察しており、変視を自覚する患者の固視についても検討中である。その一方で、検査指標の大きさをかえて、低視力の患者に対し対応可能な検査指標を作成中である。今後さらに変視症をきたす種々の疾患に対応できる変視検査を開発したいと考えている。
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