種々の黄斑疾患では、視力低下、中心視野障害のほかに自覚的に物体が歪んで見える変視症を訴える。変視症は黄斑部における視細胞や、視細胞外節の配列の乱れにより発生すると考えられる症状で、黄斑疾患の早期発見、経過観察のみならず患者の日常生活における視覚の質にかかわる極めて重要な臨床症状である。我々は、変視を自覚するためには、ある一定の長さの連続した直線による網膜面への刺激が必要であり、変視症を有する症例の臨床研究において、この直線を間隔の狭い点線から徐々に間隔の広い点線に変えることにより次第に被検者は変視を自覚しなくなることを見出した。そしてこの現象を応用することにより、非常に簡便に変視量が定量化可能であることが判明した。我々は、この現象を応用し(株)イナミと共同で新しい変視表M-CHARTS^【○!R】を開発した。その一方で高解像度CRTを用にてlow vision用の変視表を作成した。 このM-CHARTS^【○!R】を用いて、正常眼、黄斑前膜、黄斑円孔、中心性漿液性網脈絡膜症、加齢性黄斑変性症に対し変視量の定量化を行った。また、眼底写真やscanning laser ophthalmoscope(SLO)を用いて、黄斑部の形態学的所見と変視量の関係を検討した。 まず、検査の再現性を調べるため、正常眼、黄斑前膜、中心性漿液性網脈絡膜症、加齢性黄斑変性症について検査を各3同ずつ行った。すべてにおいて再現性は良好であった。特発性黄斑前膜において縦線の変視量と横線の変視量を比較すると、横線の変視量の方が大きい傾向にあった。また、黄斑前膜の自然経過と変視量の変化を検討した。黄斑前腹の進行に影響を受けるのは網膜血管と考え、その移動量と変視量の変化を検討した。網膜血管の移動量に変相量は相関した。 特発性黄斑円孔において変視量は、円孔直径よりもfluid cuffの大きさに相関をしめす傾向にあった。高解像度CRTにおける変視量は、紙面であるM-CHARTS^【○!R】の変視量とほぼ同様の値をとった。さらに視標の大きさを変化させたところ視力0.1以下でも有用であった。 以上よりM-CHARTS^【○!R】は、変視症を簡便に定量でき、変視症を有する黄斑疾患の経過観察に有用であると考えられた。
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