研究概要 |
1.線維柱帯切除術の時に得られたステロイド緑内障眼の,隅角線維柱帯の細胞外マトリックスの分布を免疫組織学的に調べた。その結果,正常あるいは隅角発育異常緑内障の隅角組織と比較して,ミオシリン蛋白が角膜で増加しているようであったが,線維柱帯では明らかな変化はなかった。ヘパラン硫酸系のプロテオグリカンおよび4型コラーゲンは外側の線維柱帯で増加していた。一方,6型コラーゲン,フィブロネクチンに明らかな変化はなかった。さらに,光学顕微鏡二重免疫染色を行い,ミオシリン蛋白が6型コラーゲンと同様の分布パターンを示していた。ミオシリン蛋白は,他の細胞外マトリックスとは分布がやや異なっていた。 2.緑内障治療薬の眼圧下降機序を解明する目的で,α,βブロッカーであるニプラジロールを2週間ラット眼に点眼し,細胞外マトリックスの代謝酵素の前眼部における変化を免疫組織学的に調べた。その結果,ニプラジロールを点眼した眼で,線維柱帯のMMP-2とMMP-9,TIMP-1が増加していて,TIMP-2が減少していた。ニプラジロールが線維柱帯の細胞外マトリックスに作用して,眼圧が下降させていることが示唆された。 3.上記2で得られた結果を確認する目的で,ラット眼にニプラジロールを2週間点眼し,細胞外マトリックスの代謝酵素の前眼部における量的変化をELISA法で検討中である。 4.水分の移動に関係する蛋白であるアクアポリンの線維柱帯における分布を免疫組織学的に調べた。その結果正常の隅角線維柱帯には,アクアポリン-3とアクアポリン-4が分布することが分かった。
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