研究概要 |
移植末梢神経内に軸索を再生した、網膜神経節細胞の数を増加させるためには、1)軸索を切断されても生存している細胞の数を増加させて再生のチャンスを増加させる、2)生存細胞の軸索伸長を促進させる、3)軸索伸長を阻害する物質を中和する、の3つが有効な方法と考えられる。今年度は生存細胞を増加させる手段を見いだし、軸索再生が促進されるかどうか調べた。 最も効果的な神経栄養因子の組み合わせを知るために、視神経切断直後、神経栄養因子を単独で1μg眼球内に注入した。14日後に中心野の細胞密度とそれぞれの細胞タイプの割合を、左右の網膜で比較して、軸索を再生したα細胞、β細胞、その他の細胞の数を類推した。脳由来栄養因子(BDNF),毛様体栄養因子(CNTF),グリア細胞由来栄養因子(GDNF)の投与で、生存細胞数が優位に多かった。次にこれらの神経栄養因子と環状AMP合成酵素の活性を高めるforskolinを眼球内に注入し、その効果を調べた。BDNF、CNTF、forskolinを同時に眼球内投与すると(BCF投与)、β細胞の生存を促進し、50%の細胞が生存していた(無注入では10%)。 次にBCF投与の軸索再生促進効果を調べた。末梢神経を視神経断端に移植した直後、BCFを注入した網膜では再生細胞が10379±5087(N=6)であったが、BCF投与しない網膜では3252±458(N=6)と、BCF注入によって再生細胞が約3倍増加していた。しかしBCFを再度投与しても、移植3日後投与では再生細胞数が10821±3091(N=3)、7日後投与では7942±3708(N=3)と、増強効果は認められなかった。 さらにBCF投与網膜の再生細胞数は、α細胞数は1.7倍、β細胞数は3.4倍、その他の細胞数は1.9倍と、特にβ細胞の軸索再生を促進した。
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