研究概要 |
1.軸索伸長速度の推測 末梢神経移植で軸索を再生した,ネコ網膜神経節細胞(RGC)の数は5千以下である.再生細胞数を増やす手段の一つとして,再生軸索の伸長速度の促進が考えられ,そのための基礎データとして軸索伸長速度を推測した.視神経断端に末梢神経を自家移植して4,6,8週後に,接合部から10mmと20mmの部位に異なった蛍光色素を注入して,再生RGCを標識した.10mm以上軸索を再生したRGCの数の増加は,6週でほぼ止まった.10mmと20mmに注入した蛍光色素で標識されたRGCの二重標識の割合のグラフから,再生速度は最速:1.3mm/日,最遅:0.27mm/日,の値が推算された,RGCのタイプによる再生速度を推測したところ,α細胞の軸索再生速度が高い可能性が示唆された. 2.再生神経節細胞におけるNeuroglycan Cの発現 Neumglycan C(NGC)は,我々がラット脳から単離した,神経組織に特異的なコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである.網膜を含む幼若期の中枢神経系において,NGCが神経細胞体と線維に,一過性に発現することをが報告されている.ネコ視神経再生時におけるNGCの発現を調べた.視神経切断端に末梢神経を自家移植して8週後,移植末梢神経にdextran-蛍光色素を注入し,軸索を再生したRGCsを標識した.3日後に潅流固定して網膜と移植神経を剖出した.網膜および移植神経の凍結切片と網膜伸展標本を,NGCコアたんぱく質に対する抗体で免疫染色した.軸索を再生したRGCsおよび再生軸索線維に,NGCの発現が特異的に認められた.これまでのところNGC発現RGCsの細胞体の大きさの分布に特に傾向は認められなかった.【結論】軸索再生時にもNGCが発現され,たんぱく分子が両生軸索に輸送されることが明らかになった.
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