小児固形腫瘍において、腫瘍増殖に関わると思われるgrowth factorのうち、vascular endothelial growth factor(VEGF)と、これのレセプターであるFlk-1について、これらの発生程度および局在を、中心的小児固形腫瘍である神経芽腫について検討した。 【対象と方法】20例の神経芽腫について検討した。20例中、早期症例が13例、進行症例が7例であった。VEGFおよびFlk-1についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色を行い、これらの発現の量および局在を検討した。発現量の評価は染色陽性細胞の割合により4段階に判定した。増殖期にのみ発現する、Ki-67抗原の発現を免疫組織染色で評価し、その染色率とVEGF、Flk-1の発現との関連を検討した。また、発現量と進行度、リンパ節転移、骨転移等の臨床データとの間に関連があるか否かを統計学的に検討した。 【結果】(1)VEGF、Flk-1ともに腫瘍細胞の細胞質、ならびに血管内皮細胞に陽性発現を認めた。VEGF、Flk-1ともに腫瘍細胞において、早期症例に比して進行症例で有意に高発現であった。(2)細胞増殖能とVEGF、Flk-1の発現では、両者とも有意な関連は認められなかった。しかし、VEGF、Flk-1共に陽性、または強陽性では、MIB-1LIが高値の増殖能の高い腫瘍が多い傾向がみられた。(3)局所進展度とVEGF及びFlk-1との間には、いずれも有意の関連を認めなかった。リンパ節転移では、多数のリンパ節転移を認める症例のほうがVEGF、Flk-1ともに有意に高発現であった。また骨転移に関しても、骨転移を認めない症例に比して、骨転移を認める症例のほうがVEGF、Flk-1ともに有意に高発現であった。 【まとめ】以上の結果より、VEGFが神経芽腫の腫瘍の進展、特に転移の成立に強く関与していることが示唆され、進行例における血管新生阻害剤の臨床応用に関して、効果が期待される。
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