研究概要 |
神経芽細胞腫凍結検体約200検体からRNA,蛋白を抽出し,既存の電気泳動装置を用いてノザンハイブリダイゼーション,蛍光サーマルサイクラーを用いたRT-PCR等にてテロメア結合蛋白hTRF1,hTRF2の発現を検討したところ,hTRF2の発現はテロメア長との間に相関はなかったが,hTRF1発現量はテロメア長と正の相関を認めた.凍結標本を,抗hTRF1,hTRF2抗体で染色し,発現レベルを解析したが,染色性が乏しく有意な結果は得られなかったが,FISH法にてテロメア染色を購入した冷却CCDカメラと解析装置で行うと,サザン法にてテロメア長の長かった腫瘍のシグナルは強く,hTRF1,hTRF2の局在との関連を検討中である. さらに,TUNNEL法とDNA断片化から,腫瘍のアポトーシスを検討すると,テロメラーゼ活性がないか低い腫瘍は,アポトーシスに向かう腫瘍細胞の混在が確認され,全腫瘍細胞に対し5-54%を占めており,この比率はテロメア長と逆相関した.一方,テロメラーゼ活性の高い腫瘍はアポトーシス細胞の占める割合が5%以下の腫瘍が多かった.腫瘍細胞を遊離し,Propidium iodide染色でhypodiploidの細胞数を算出すると,TUNNEL法とDNA断片化と異なり,高テロメラーゼ腫瘍にもhypodiloid細胞が少なからず存在し,これは壊死細胞の混入と考えられた.以上から,テロメラーゼの活性化を認めない神経芽腫はアポトーシスへ向かうシグナルが働いていることが示唆され,これにテロメア短縮が関与しており,テロメア長を制御するテロメア結合蛋白の発現量による調節が示唆された.一方,テロメラーゼ活性の高い腫瘍はアポトーシスが抑制され,これらの機序を解明中であり,これらの腫瘍でのテロメラーゼ活性抑制効果を来年度に検討する予定である.
|