研究概要 |
神経芽細胞腫凍結検体約200検体からRNA,蛋白を抽出し、既存の電気泳動装置を用いてノザンハイブリダイゼーション,蛍光サーマルサイクラーを用いたRT-PCR等にてテロメア結合蛋白hTRF1,hTRF2の発現を検討したところ,hTRF1発現量はテロメア長と正の相関を認めた.さらに、最近クローニングされたテロメア結合蛋白であるTankylase, TIN2, hRap1について検討したが、有意な相関は得られなかった。FISH法にてテロメアを染色し、購入した冷却CCDカメラと解析装置で行うと,サザン法にてテロメア長の長かった腫瘍のシグナルは強く,hTRF1,hTRF2の局在とほぼ一致した。神経芽腫の細胞株5株で検討した結果、5株ともテロメラーゼ活性は高く、これらのうち4株はテロメア長が短縮し、テロメア結合蛋白の中でhTRF1発現がテロメア長と相関した。これらの細胞を、抗hTRF1抗体,抗hTRF2抗体で処理したところ、細胞増殖能は変化がなく、テロメア長は延長した細胞株が3株存在し、テロメラーゼ活性には変化がなかった。また、TUNNEL法とDNA断片化からアポトーシスの誘導を検索したが、有意なアポトーシスの誘導効果は得られなかった。そこで、テロメラーゼの必須部分であるhTRを切断するリボザイムを投与すると、5株中2株にテロメラーゼ活性が抑制され、細胞死がみられた。TUNNEL法とDNA断片化から,腫瘍のアポトーシスを検討すると,アポトーシスに向かう腫瘍細胞の混在が確認された。 以上から,テロメラーゼの活性の抑制により、神経芽腫はアポトーシスへ向かうシグナルが働いていることが示唆された。
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