癌抑制遺伝子候補ING1は、その発現を抑制するこにより、in vitroにおけるソフトアガーアッセイやフョーカスフォーメーションアッセイにおいて細胞増殖を促進し、in vivoにおいて腫瘍形成を促す。われわれはヒト神経芽腫の発生・進展においてING1が関与しているかどうか調べるために、80例の原発性神経芽腫組織と6例の神経芽腫細胞株を用いて突然変異の検索を行った。また、20例の原発性神経芽腫組織と6例の細胞株を用いてmRNAの発現解析も施行した。ING1遺伝子には2つのスプライシング変異体が存在し、それぞれ2つのエクソンからなっているが共通のエクソンは全コーディング領域の約80%を占めるため、その共通エクソンにおいてSSCP-PCR法を用いて突然変異の検索を実施した。また、mRNA発現の解析はRT-PCR法を用いて半定量的な解析を施行した。その結果、突然変異は原発性神経芽腫組織および細胞株においてまったく認められなかったが、ヒト脳組織に比べて検索したすべての神経芽腫組織および細胞株においてmRNA発現の著明な低下を認めた。以上より、ヒト神経芽腫において突然変異はまれであるが、その発現低下が腫瘍の発生・進展に関与している可能性が示唆された。
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