研究概要 |
本研究は小腸移植における免疫寛容誘導法開発の基礎研究として,豊富なグラフト腸間膜リンパ組織の拒絶に関与する機序に着目し解析した. 【方法】 1.ドナーとしてBNラット,レシピエントとしてLEWラットを使用し,異所性小腸移植を行った.実験群は小腸移植を施行し,FK506投与群(0.5mg/kg/day:28日間)と非投与群を作成した.移植1日目,4日目,7日目にグラフト腸管と腸間膜リンパ節を採取し,subpopulation等の種々の検索を行った. 2.FK投与群では,長期生着したグラフト腸間膜リンパ節において,apoptosis cellの検索,flowcytometryによるドナー細胞の推移,RT-PCRによるcytokineの発現を検討した. 【成績】 1.FK群では全例100日以上のgraft survivalが得られたが,長期生着例には慢性拒絶の所見が認められた.一方,非投与群では全例10日以内にグラフトは拒絶された.FK群ではグラフト腸間膜リンパ節のapoptosis cellの出現は非常に少なく,正常腸間膜リンパ節と同様であった.一方,FK非投与群では,移植4日目にはapoptosis cellが増加していた. 2.移植1日目に,非投与群の腸間膜リンパ節細胞の30%はレシピエント由来の細胞に置き変わっており,4日目には70%がレシピエント由来となった.一方,FK投与群では7日目でも15%はドナー由来で,明らかに非投与群と比べドナー細胞が残存していた.また,非投与群のレシピエント浸潤細胞はCD8がCD4より有意に検出された.FK投与群ではこの変化は観られなかった. 3.グラフト腸間膜細胞のB7-1,B7-2の発現の検索では,FK投与群では明らかに非投与群と比べ,発現の低下がみられた. 4.非投与群ではグラフト腸間膜リンパ節におけるIFN-gamma, IL-10の発現はグラフト腸管での発現に先行して認められた.FK投与群では,4日目までにIFN-gamma, IL-10の発現は低下した.しかし,IFN-gammaは移植30日目に発現が増加し,その後100日目には再度低下した.
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