研究概要 |
神経因性膀胱及び低容量膀胱の治療には、従来より腸管利用膀胱拡大術が施行されてきている。しかしながら、腸管粘膜が尿に接触することに由来する術後合併症の発生が少なくなく、必ずしも満足のいく結果が得られていないのが現状である。そこで今回我々は膀胱移植を用い、移植片膀胱をレシピエント膀胱に吻合する膀胱拡大術の可能性を実験的に検討した。 BN系ラットをドナーに、Lewis系ラットをレシピエントに用いた。生後30日以内のBNラットの膀胱を10-12週齢Lewisラットの大網に移植した。生着した移植片膀胱を移植後2週目にLewisラット膀胱に吻合し膀胱拡大術を施行した。免疫抑制剤にはFK506(0.6mg/kg/day, 筋注)を使用した。その結果、 1)ラット同種膀胱移植における免疫抑制剤FK506の有用性を初めて示した。 2)移植後大網に生着したドナー移植片をレシピエント膀胱に吻合する、いわゆる膀胱拡大術に初めて成功した。 3)胎児の組織が大網に移植された場合、高率に生着することはよく知られているが、新生児の組織(腸管、食道や腎など)は生後1週を過ぎたものでは生着しない。しかし、膀胱では生後1週以上の新生児の組織でも大網に容易に生着することを我々が初めて明らかにした。 上記の新しい知見をTransplantationおよびJournal of Urologyの英文雑誌に報告した。 今回の研究により、膀胱移植を利用した膀胱拡大術の可能性が初めて明らかにされた。今後は大動物を用い、臨床応用が可能であるかを引き続き研究を行っていく予定である。
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