研究概要 |
神経因性膀胱及び低容量膀胱の治療には、従来より腸管利用膀胱拡大術が施行されてきている。しかしながら、腸管粘膜が尿に接触することに由来する術後合併症の発生が問題となっており、必ずしも満足のいく結果が得られていないのが現状である。そこで今回我々は膀胱移植を用い、移植膀胱をレシピエント膀胱に吻合する膀胱拡大術の可能性を実験的に検討した。 新生仔BNラットの膀胱(ドナー)を5週齢Lewisラット(レシピエント)の大網に移植した。生着した移植片膀胱を移植後10日目にレシピエントの膀胱に吻合し膀胱拡大術を施行した。免疫抑制剤にはFK506を使用した。その結果、1)ラット同種膀胱移植における免疫抑制剤FK506の有用性を初めて示した。 2)移植後大網に生着したドナー移植片をレシピエント膀胱に吻合する、いわゆる膀胱拡大術に初めて成功した。 さらに、16週齢成獣ラットをドナーに用いて同様の膀胱拡大術モデルを作成し、これを小腸利用膀胱拡大術モデルと比較検討した。その結果、3)膀胱移植を用いたものは小腸を用いたものに比し、長期経過観察後の合併症の面で有利であった。 4)成獣の膀胱でも生着が確認され、生体膀胱移植の可能性が初めて示唆された。 上記3),4)の結果は、国際学会(American Academy of Pediatrics 2003)で発表予定である。
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