研究概要 |
皮弁の最適化を分子生物学機構解析、情報伝達系操作皮弁により安全領域の拡大と新しい皮弁開発につなげる目的で、これまで創傷治癒、骨代謝において単一リガンド受容体以降情報伝達系の比較的確立されたインターロイキン6スーパー・ファミリーの中でも、情報伝達担当のgp130受容体の中和、制御にて軸性皮弁の生存活性への効果を分子生物学的解析検討した。更に,皮弁を用いた、組織再生につき検討を加えた。 ウィスター・ラット腹壁に浅腹壁動脈内側枝のみを皮弁栄養血管とする8×8cm^2の皮弁挙上し、対照群、LIF cDNA注入群、LIF cDNA+ヤギ抗ヒトgp130中和抗体注入群(混合群)、ヤギ抗ヒトgp130中和抗体注入群の4群に分け、レーザー皮弁血流測定、定量皮弁生存活性、微小血管造影、血管新生因子mRNA発現、受容体情報伝達mRNA発現、組織学検討を実施した。 レーザー皮弁血流測定では、混合群、ヤギ抗ヒトgp130中和抗体注入群では術後3日、7日、皮弁3箇所で有意な血流増を認めた。術後3日の定量皮弁生存活性は混合群、ヤギ抗ヒトgp130中和抗体注入群で対照群に比較し有意に生存活性上昇していた。(77±5.3%,88±1.5%,45±7.8%,P<0.05)微小血管造影では混合群、ヤギ抗ヒトgp130抗体注入群では血管の増大を血管茎付近で認め、特にgp130抗体群では遠位部にまで血管網の発達を認めた。血管新生因子であるVEGFmRNA発現は2つのisoform共に全群で認めたがヤギ抗ヒトgp130抗体群で発現量が大きかった。情報伝達受容体であるgp130mRNA発現はLIF群で最大であった。術後3日の組織学検討では、上皮の構造は混合群で最も保たれており、炎症細胞浸潤はヤギ抗ヒトgp130抗体群で最も少なかった。抗gp130中和抗体は血管茎付近の血管新生、血行を増加し血管網の発達を皮弁末梢まで認め、血管新生mRNA発現も増加させ、皮弁分子操作の候補となることが示唆された。また、本法は間葉系幹細胞と骨誘導蛋白、血管新生蛋白の血管内導入により、包埋担体中に有意な骨特異蛋白の発現と骨髄様構造を認め、骨再生に有用な手法であることが確認された。
|