研究概要 |
熱ショック蛋白(Hsp)は温熱などのストレスにより細胞内に一時的に誘発される蛋白質で,細胞の損傷からの防御と修復に関与することが知られている.平成13年度はラット臼歯を用いた発生過程ならびに窩洞形成後の歯髄再生過程を検索し,以下の結果を得た. ラット臼歯発生過程において,象牙芽細胞に特異的なHsp25/27発現がみられたが,象牙前質内細胞突起も免疫陽性を示した.Hsp25/27免疫・ファロイジン二重染色を施すと,Hsp25/27免疫陽性象牙芽細胞体周囲ならびに細胞突起がファロイジン陽性を示したが,象牙質内のファロイジンの反応は象牙質内歯髄側半分に限局していた. ラット臼歯窩洞形成後の象牙芽細胞の反応を熱ショック蛋白heat shock protein(Hsp)25/27抗体による免疫細胞化学により検索して以下の結果を得た.窩洞形成は傷害を受けた象牙芽細胞と象牙前質間に彦出性変化を惹起し,ファロイジン陽性の象牙芽細胞突起の断裂像が認められた.窩洞形成により傷害を受けた象牙芽細胞はHsp25/27免疫陽性を持続していたが,12時間後までに歯髄・象牙境のHsp25/27免疫反応は消失した.しかしながら,傷害を受けた部位では,明らかな細胞突起をもたない円形の細胞がHsp25/27免疫陽性を持続しており,窩洞形成後にも象牙芽細胞が生存していることが示された.窩洞形成12時間後には,数多くのHsp25/27免疫陰性・ファロイジン陽性の細胞が歯髄・象牙境に集積し,その細胞突起を象牙細管深くに侵入させており,これらの細胞が免疫担当細胞であることが伺われた.72時間後には,新しく分化した象牙芽細胞が歯髄・象牙境に配列し,Hsp25/27免疫陽性を示した.以上の様に,Hsp25/27免疫反応が象牙芽細胞の再生過程を反映していること,また当該蛋白が象牙芽細胞の分化マーカーとして利用できることが示された.
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