研究課題/領域番号 |
12671766
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
程 くん 新潟大学, 歯学部, 助教授 (40207460)
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研究分担者 |
朔 敬 新潟大学, 歯学部, 教授 (40145264)
大城 和文 新潟大学, 歯学部, 助手
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キーワード | 唾液腺腫瘍 / p53 / 癌抑制遺伝子 / 遺伝子変異 / DNA / PCR / 塩基配列解析 |
研究概要 |
今年度は、これまで中国各地で収集した150例の唾液腺悪性リンパ上皮腫、同時に中国各地で収集したワルチン腫瘍および日本国内の被爆者症例を含むワルチン腫瘍の症例30例、さらに被爆者症例を含む粘表皮癌30例、腺様嚢胞癌50例、多形性腺腫70例、筋上皮腫30例の症例についてHE染色標本によって再度病理組織学的評価をおこなった。さらに、パラフィン切片からDNA試料採取部位を決定した。 上記病例のうち、とくにリンパ上皮腫、粘表皮癌、およびワルチン腫瘍について重点的にパラフィン連続切片を作製し、p53遺伝子産物の局在を免疫組織化学的検索をおこない、腫瘍組織内の発現を確認した。その結果、p53蛋白質粘表皮癌に過剰発現していることをみいだした。ワルチン腫瘍ではほとんど発現はなく、リンパ上皮腫でも軽微であった。さらに、p53蛋白質過剰発現が確認された腺様嚢胞癌および多形性腺腫については、その背景としての組織構築の特異性を検討した。 上記三種の腫瘍症例について、パラフィン切片を脱パラフィン後、プロテイナーゼKおよびフェノールよってDNAを抽出し、p53のexon5、exon6、exon7について、それぞれプライマーを設計し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって、各exon断片を増幅した。PCR産物はアガロースゲル電気泳動によって確認し、必要に応じて、ゲルを切り出しして二次PCRをおこない、その産物をカラム精製して、サーモシーケナーゼ反応をおこない、蛍光式DNAシーケンサによって塩基配列を決定した。その結果、リンパ上皮腫ではきわめて高度かつ広範に変異がみいだされたが、粘表皮癌では変異は軽微であり、ワルチン腫瘍では遺伝子多型を示唆するものにとどまった。ただし、いずれの変異も症例間で共通した部位に出現していた。これらは、いわゆるp53遺伝子のホットスポットに位置するものであった。 したがって、それぞれの唾液腺腫瘍発生にp53遺伝子の遺伝子変異ないしは遺伝子多型性が重要な役割をはたしている可能性が示唆された。今後はさらに解析対象の症例を追加して、今年度の結論の正当性を判断するとともに、変異部位の機能の解析を進める予定である。
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