胎生12日のマウス胎仔より、RT-PCR法を用いてOASIS遺伝子を単離し、pGEM-T Easyベクタに組み込み、アンチセンスRNAプローブおよびセンスRNAプローブを作成した、これらを用いて、歯胚におけるOASIS遺伝子発現を調べるために、胎生12日以降のICRマウス胎仔を摘出し、その頭部を4%パラホルムアルデヒドにて浸漬固定した。通法に従い10μmのパラフィン薄切切片とし、プレパラートに貼付し、ディゴキシゲニンにてラベルされたプローブにより、ハイブリダイゼーション反応を行い、OASIS遺伝子の発現と消長を検索した。なお、センスプローブは対照実験に用いた。各々のプローブについて、電気泳動によりその分子量を調べ、正しいプローブであることも確認した。 胎生12-16日以降のICRマウスの歯胚について、歯胚の発生段階に応じて比較検討した。胎生12日歯胚では、上皮である歯提や、その周囲の間葉には陽性反応を認めなかった。さらに発生の進んだ胎生14日歯胚では、蕾状期の臼歯および切歯の上皮組織である歯提に、ディゴキシゲニン陽性反応が認められ始めた。さらに、胎生16日での帽状期歯胚では、臼歯と切歯歯胚にOASIS遺伝子発現の差が認められ、まず臼歯歯胚では内エナメル上皮に、切歯歯胚では上皮であるアピカルループおよび間葉である前象牙芽細胞にディゴキシゲニン陽性反応が認められた。次いで、胎生18日の前期鐘状期歯胚においても臼歯と切歯歯胚にOASIS遺伝子発現の差が認められた。胎生18日の臼歯歯胚では内エナメル上皮特に咬頭付近の内エナメル上皮と、咬頭頂直下の前象牙芽細胞に、切歯歯胚ではアピカルループおよび前象牙芽細胞にディゴキシゲニン陽性反応が認められた。生後1日の後期鐘状期歯胚において、臼歯ではアピカルループ付近の内エナメル上皮に、切歯ではアピカルループおよび前象牙芽細胞に認められたが、切歯の前エナメル芽細胞には認めなかった。 以上のようにOASIS遺伝子は、歯の発生段階に応じて、部位及び時期特異的に発現することが明らかとなった。このことより、OASIS遺伝子は歯胚発生に必須な因子であり、歯胚の形態形成に重要な役割を果たしている可能性が明らかになった。
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