研究概要 |
1)DNAワクチンの投与経路別の免疫応答 後肢筋肉内投与,唾液腺(顎下腺)内投与,および経鼻接種におけるワクチンの効果をBALB/cマウス(6週齢,オス)を用いて検討した.経口接種に関しては,Porphyromonas gingivalis線毛遺伝子を包含するプラスミドDNAとリポゾームを撹拌機で混和した試料を用いた.後肢筋肉内投与方法(4回の抗原接種)において,十分な特異的IgG抗体(血清,唾液)の誘導が認められた.唾液腺内投与,および経鼻接種では,特異的IgG抗体(血清,唾液)の誘導とともに,IgA抗体(唾液)の上昇も認められた.特に,顎下腺への逆行注入法による免疫法では,接種2回目以降に特異的抗体価の急激な上昇がみられたことから,同接種法が3つの方法のなかでは最も効率のよい接種法であることが示唆された.さらに,最終免疫からの抗体価の持続期間について検討すると,逆行注入法による免疫法が他の2者に比べ,3ヶ月にわたり有意に高い特異的抗体価を維持した. 2)線毛特異的な細胞傷害性T細胞の機能測定 細胞性免疫の誘導を確認するため,最終免疫終了後の脾臓から単核細胞を分取し,その細胞浮遊液に線毛タンパクを加え,4-6日間インキュベートした(effector cell).線毛を発現させた肥満細胞(target cell)にeffector cellを加え,細胞から遊離した乳酸デヒドロゲナーゼを細胞傷害性の指標としてE/T ratioを測定した.その結果,すべての免疫群において特異的細胞傷害性T細胞が誘導されており,体液性免疫とともに細胞性免疫の応答が惹起されたことが明らかとなった. 以上の結果より,ヒト歯肉上皮細胞に付着し,侵入する歯周病原性細菌の感染に対して口腔関連組織へのDNAワクチン接種法は粘膜免疫を含めた全身免疫を賦活化する有用な方法のひとつとなることが示唆された.
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