CTGFの持つin vitroでの作用、即ち増殖と分化、接着と遊走の促進という二面性が発生過程でどのように発現するのか解析する目的で、正常発生過程でのCTGF/Hcs24遺伝子発現のパターンを分析した。CTGF遺伝子発現の最初のピークは7〜9日胚の体節の背側の椎板での発現を中心とし、以後減衰して13日胚頃から再び上昇した。13日胚になると指の基節骨、尾椎を含む椎骨の肥大軟骨に発現し始め、肢骨、肋骨をはじめとする内軟骨性骨の肥大軟骨の存在する肥大化層へと特異的に発現する部位が増加していった。この部位はtype X collagenの発現部位ともよく一致していた。一方、骨膜や増殖軟骨での発現はどのステージにも見られなかった。また、転写因子Cbfa1の遺伝子発現部位と時期はCTGFと相同であったがCbfa1は増殖軟骨にも発現していたことからCbfa1の方がCTGFより早いステージから発現することが示唆された。更に、Cbfa1遺伝子をノックアウトしたマウスではどの部位でもCTGFの遺伝子発現は見られなかったことからCTGF遺伝子発現がCbfa1により講導されている可能性が示唆された。 次にtypeXIコラーゲンのプロモーターにヒトCTGFをつなぎ、トランスジェニックマウス(Tg)を作出し、関連遺伝子の発現を解析した。6ヶ月齢の雄では、Tgでは見かけはコントロールより小型だったものの全ての組織器官は見かけ上正常に形成されていた。しかし置換骨のみならず全ての骨で骨密度が低かった。歯牙はコントロールと差が見られなかった。18.5日胚でCTGF遺伝子発現を比較すると、Tgではgenomicなマウスctgfの発現量がコントロールより少なかったため、新生児で遺伝子発現を解析すると、Tgでは諸処の肥大軟骨でのマウスCTGF遺伝子発現がやや低下していたし、typeIコラーゲン遺伝子の膜性骨化部位での発現も明らかに低下していた。即ち、Tgに見られる骨密度の低下は内在性のCTGF遺伝子の発現低下、トータルでのCTGFの過剰による血管増生による髄腔拡大、膜性骨化部位の機能低下に起因すると推測された。Tgマウスは雄の精巣の大きさがコントロールの約1/8と発育が悪く繁殖能力に障害があった。臨床応用を目的とした遺伝子の導入には、プロモーターに選ぶ遺伝子によってはかえって副作用が全面に出るケースがあったことは今後の遺伝子治療に一定の警告を出す意味があると考えられる。
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