研究概要 |
今年度は、マウスの成長期と老化期における顎運動に関与する制御システムに関する経日的変化を形態学的・細胞生物学的立場から研究を展開してきた。まず、神経解剖学の立場から、20日齢と30日齢のマウスにおいて片側抜歯を行い、顎運動に関与する三叉神経運動核と中脳路核における神経細胞の動態について検討し、歯根膜に分布する知覚神経終末からの情報がいかなるメカニズムで顎運動の制御中枢の発達・老化および恒常性維持に関与しているかについて解析した。結果として歯の喪失が早い個体ほど、顎運動制御システムに大きな影響を与えることが明らかになった。つまり、20日齢における片側抜歯個体群において、30日齢において同様の処理をした個体群より、早期に三叉神経運動核と中脳路核における神経細胞の細胞数の現象が観察された。そこで、個体の成長期において様々な液性因子、すなわち線維芽細胞成長因子(aFGF,bFGF)とc-Fos等が咀嚼システム(三叉神経運動核、中脳路核、海馬扁桃体、唾液腺等)の発達にいかなる役割を果たしているか、また、それらの液性因子と歯根膜からの感覚情報がいかなる関連性を持っているか等についてを検討した。その結果、様々な液性因子が、咀嚼システムの発達と恒常性維持に重要な役割を果たしている可能性を示す結果が得られ始めた。来年度は歯の喪失と液性因子との関連性について詳細な検討を加えていく予定である。 以上のような平成12年度に得られた結果によって、歯根膜に分布する知覚神経終末から中枢に向けて送られる知覚性の情報が、咀嚼システムの発達、恒常性維持および老化に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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