咀嚼システムの発達・老化、および恒常性維持には多くの因子が関与している。平静13年度の研究では、歯牙喪失に起因する歯根膜における知覚神経終末からの知覚入力の欠除が顎運動制御システムに与える影響等についてマウスを用いて解析するとともに、様々な液性因子がどのように関与しているかについて、昨年度に引き続き検討し、以下のような結果を得た。 正常マウスにおいても老化とともに、下歯槽神経に変性が起きることが明らかになった。この変性に引き続き、顎運動制御システムに属する三叉神経運動核と三叉神経中脳路核における咬筋支配のニューロンの数の減少が起きていた。さらに、発達途上のマウスにおいて、歯牙の部分的喪失により、歯牙萌出直後の限られた時期において、部分的な歯牙喪失のみでも咬筋支配の運動ニューロンの減少が容易に引き起こされることが明らかになった。また、今回の研究によって、咬筋の錘外筋線維の萎縮による咬筋機能の低下が咬筋に分布する筋紡錘を支配する三叉神経中脳路核ニューロンの減少を二次的に引き起こすことが示唆された。咀嚼システムの維持にはaFGF、bFGFなど、様々な液性因子が関与していることが明らかになった。
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