破骨細胞の分化は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と破骨細胞分化因子(RANKL)の組み合わせにより制御されている。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、破骨細胞分化においてM-CSFの作用を代償することが明らかになった。本研究では、VEGFの作用で誘導された破骨細胞の微細形態の観察と、VEGFの成熟破骨細胞に対する作用ならびにエストロゲン欠乏下における破骨細胞誘導活性について検討を行った。 M-CSFの活性を欠如した大理石骨病(op/op)マウスに遺伝子組換え型ヒトVEGFを投与して誘導した破骨細胞は、核数は少ないものの、発達したruffled borderの形成が認められ、骨吸収機能の発現が形態学的に示唆された。成熟破骨細胞に対するVEGFの影響を調べるために、正常マウスから単離した破骨細胞培養系にVEGFを添加するとM-CSFの場合と比べ極めて緩やかであるが細胞伸展を惹起することが明らかになった。このことから、VEGFは破骨細胞の分化だけでなく活性にも作用しうることが示唆された。一方、op/opマウスの卵巣摘出を行うと破骨細胞の急激な増加が起こり骨吸収の亢進が見られることが示され、さらにこの現象はVEGF拮抗剤の投与で抑制されることが示された。 以上のことから、VEGFは破骨細胞の形成のみならず活性化にも影響を及ぼすことが明らかになった。また、VEGFはM-CSFと同様にエストロゲンによる制御を受けていることが示唆され、閉経後骨粗鬆症における破骨細胞の増殖と活性化にも関与している可能性が示された。
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