研究概要 |
実験1:8週齢ウィスター系雄性ラットの歯肉溝より5mg/ml濃度のE.Coli由来LPSを投与し臼歯部口蓋側辺縁歯周組織に惹起される組織学的変化や局所でのMIP-2発現を免疫組織学的に検討した.LPS投与により接合上皮(JE)やJE直下の歯肉結合組織での好中球遊走や血管拡張・浮腫などの炎症性変化や投与後3時間と3日後にピークを示す2相性の破骨細胞増加に伴う歯槽骨吸収等の変化が生じた.その際JE細胞では1時間から3日にかけてMIP-2が発現が誘導され,LPS投与後の局所への好中球誘導にJE細胞から産生されるMIP-2が関与することが明らかとなった.実験2:0.05,0.5,5.0,50μg/ml濃度になるように生食水に溶かした合成ラットMIP-2を5μlづつ10分ごとに滴下することにより1時間にわたって作用させ,投与開始3時間後と3日目の組織学的変化を観察しLPS投与群と比較検討した.歯肉溝より投与したMIP-2はJE内およびJE直下歯肉結合組織内における好中球浸潤を濃度依存的に誘導し,50μg/mの高濃度では歯肉膿瘍の形成を示す症例も観察された.また,MIP-2の局所投与により歯肉結合組織での血管拡張,浮腫や歯槽骨の破骨細胞性骨吸収などのLPSと同様の組織変化も引き起こされた.以上の結果より,LPS投与後の辺縁歯周組織においてJE細胞から産生されるMIP-2は好中球誘導ばかりでなく,その後の歯周組織破壊に重要な役割を担うことが明らかとなった.現在,MIP-2抗体腹腔内投与の影響についても検討中である.
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