研究概要 |
1.実験1;7週齢ウィスター系雄性ラットの歯肉溝より0.05,0.5,5.0,50μg/ml濃度になるように生食水に溶かした合成ラットMIP-2を2μlづつ10分毎に1時間にわたってマイクロピペットにて投与し,投与開始3時間後と3日目の組織学的変化を観察し,LPS投与群と比較検討した.(1)投与3時間後,MIP-2はJE直下歯肉結合組織内における血管拡張,浮腫や濃度依存性の好中球浸潤を誘導した.5,50μg/mの高濃度では破骨細胞数の増加も観察された.(2)投与3日後,JE部では依然として好中球数の増加がみられ,低濃度投与群でも破骨細胞増加が観察されるようになった.また,50μg/m投与例では歯肉膿瘍の形成を示す症例もあった.よって,歯周炎病巣におけるMIP-2産生の増加は局所への好中球の動員に関わるばかりでなく,引き続き誘導される歯周組織破壊に重要な役割を担うと推察された.2.実験2;抗MIP-2抗体(0.1mg/200bw)腹腔内に前投与した後,5mg/ml濃度のLPS溶液を歯肉溝からの浸透投与し,3時間と3日後の組織変化をLPS投与群と比較検討した.なお,LPS浸透投与後も1日ごとに抗MIP-2抗体の腹腔内追加投与を行った.(1)好中球浸潤に及ぼす影響;MIP-2抗体投与は,3時間後の好中球数の増加には影響を及ぼさなかったが,3日後の浸潤好中球数を明らかに抑制した.(2)破骨細胞数増加に及ぼす影響;LPS投与は3時間後と3日後にピークを示す2相性の破骨細胞の増加を示す.抗MIP-2抗体前投与はLPSの惹起する3日目の破骨細胞増加を抑制する傾向を示した.以上のことから,MIP-2をターゲットとした歯周病治療の可能性が示唆された.現在,実験2に関しては投与量,投与回数などについて詳細に検討中である.
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