本研究計画は1)唾液腺組織・細胞の形態形成の分子機構の解明、2)臓器レベルでみた唾液分泌の分子機構、の2本柱で構成されている。研究は順調に進み、1)に関して、βガラクトシダーゼノックアウトマウスの解析から、耳下腺腺房細胞のcis-Golgi側に空胞構造が出現することが明かとなり、一方、甲状腺侏儒症ラットrdwでは顎下腺顆粒導管が特異的に発育不全をおこすことが判明した。これらの知見は、唾液腺が腺房や導管などがそれぞれセグメント特異的な形態形成の調節をうけていることを意味する。これらについては、2001年度に論文報告する予定である。 一方、2)に関して、臓器を構築する基本単位と考えられる導管と腺房を酵素処理により分離し、カルシウムシグナリングと水分泌や酵素分泌との関連を調べた。その結果腺房では同調的、導管では非同調的にカルシウムシグナリングが行われていることがわかった。一方、水分泌を誘発することが知られるカルバコール刺激が、水だけでなく、アミラーゼ分泌も誘発し、しかも刺激初期ほどその効果が高いことが、カラム潅流法により明らかにされた。この結果はJ Physiologyに掲載された。ヒト唾液腺でもカルバコール刺激により、特有の開口分泌像が認められ、European J Morphologyに掲載された。
|