研究概要 |
本学口腔外科に使用済み止血ガーゼを15mlのサンプル管に一枚ずつ入れ,原則として2本収集した。診断名は智歯囲炎,辺縁性歯周炎あるいは歯根嚢胞などが大部分であった。サンプル数は平成12年度273例、平成13年度308例、総サンプル数は581例であった。 HCV RNAの検出には5'非翻訳領域の2組のプライマーを用いてnested PCRを行った。陽性コントロールとして既知のHCV感染血清を用いた。その結果、8例で239bpの陽性バンドが得られた。このHCV RNA陽性率は1.38%で、平均年齢は62.6歳であったが、24歳の若年感染例が1例見られた。さらに、またHCV RNA陽性患者8例中症例7例は、受診に際してHCV感染の既往を聴取済みであった。しかし、症例7では、感染歴が聴取されていなかった。HCV RNA陽性例(症例1から8)の抗体価は、症例1:0、症例2:2.4、症例3:12、症例4:0、症例5:サンプル不足、症例6:0.3、症例7:0.2、症例8:3.7であった。 分子系統樹作成のために、HCV超可変領域の2組のプライマーを用いて遺伝子増幅を行った。各症例8から10クローンを解析した。その結果、症例6については十分なcDNAが得られず、現在も解析を進行中である。系統樹については解析した7症例は大別すると3つのクラスターに分かれている。この中で症例2ではメジャー株以外に、症例1と類似したマイナー株を持つことが示された。この事実は直ちに両者間の感染を示すものではないが、病歴・通院歴などの調査も必要である。なお今回の塩基配列が各クローンで極めて不安定で、配列は再度、シークエンサーを変えて検索を行っているところである。
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