研究概要 |
ラットをベントバルビタール・ナトリウムで麻酔し、左側大脳皮質第一次体性感覚野から上下左右の切歯及び臼歯の機械刺激に応答するニューロンを記録した。歯根膜機械受容ニューロン(歯根膜ニューロン)は第一次体性感覚野の吻内側部と吻外側部から記録され、吻内側部のニューロンは下顎切歯刺激に、吻外側部のニューロンは上顎切歯刺激に反応する単歯支配ニューロンであった。これらの大多数は速順応性であり、対側受容野を有していた。歯の機械刺激に対する閾値は0.05N以下で、刺激に対し方向選択性がなかった。この上下顎切歯ニューロン記録部位に同心円型刺激電極を刺入し電気刺激したが、律動的な安定した咀嚼様運動を誘発できなかった。従って,歯根膜ニューロンと咀嚼様運動との関係はウサギを用いて実験を行った。ウサギ大脳皮質体性感覚野に対する歯根膜ニューロンの投射部位はラットの場合とほぼ同様で、下顎切歯ニューロンは第一次感覚野の吻内側部に投射していた。遅順応性ニューロンは約10%で、他は速順応性であった。この部位の電気刺激はリズミカルな口の開閉口運動を誘発した。また、皮質感覚野の吻外側部からは臼歯歯根膜ニューロンと上顎切歯歯根膜ニューロンが検出された。その約10%は遅順応性ニューロンであった。切歯歯根膜ニューロンの最適刺激方向は唇側または舌側方向からの刺激であった。上顎臼歯歯根膜ニューロンは舌側または頬側からの刺激に最も良く反応した下顎臼歯歯根膜ニューロンは舌側方向の刺激に最も良く反応した。これらの上顎切歯や上下臼歯が投射する第一次感覚野吻外側部の電気刺激は臼磨様運動を誘発した。以上の結果より、下顎切歯は食物の咬断様運動時の、臼歯や上顎切歯は臼磨様運動時の顎運動のコントロールに関与しているのではないかと推定される。
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