研究概要 |
薬物による骨粗鬆症として抗てんかん薬のフェニトインが知られているが、その障害機序については依然不明であった。本実験では、抗てんかん薬のうちフェニトインとゾニサミドにつきラットにそれぞれ5週間20-80mg/kgを連日投与して,抗てんかん薬による骨密度の減少を顎骨,歯牙,大腿骨,脛骨について測定したところ,測定全領域において骨密度(BMD)の減少を認めた。ついで,この骨密度減少が既存の治療薬により予防あるいは回復が可能であるか検討を加えた.ビタミンD3およびその誘導体との併用投与が有効であることを認めている.加えて、ビタミンK2との併用投与により骨密度の減少が予防された。これらのことからフェニトインとゾニサミドにつき,薬物誘発による骨粗鬆症動物モデルとして確立することができ、論文にて報告した. また,ビタミンKに関しては,血中,骨中のビタミンK類の高速液体クロマトグラフィーを用いた分離方法とECDを用いた高感度定量法を確立し,ビタミンK_1とビタミンK_2同族体についてラット,ヒトでの応用性について検討し,十分測定可能であることを認め報告した. 一方,抗てんかん薬による骨量減少について,それら障害が,抗てんかん薬の化学構造に由来するものなのか,あるいはある種の抗てんかん薬だけに見られる特異的なものかを明らかするために,マウスの頭蓋骨の器官培養(in vitro系)を用い,骨吸収系に対して各種抗てんかん薬がどの様な影響を及ぼすか検討した.フェニトイン、ゾニサミドに関しては,フェニトインに骨直接の吸収作用があることがあることが判明しているが,ゾニサミドにはその作用が無いことを認めている. 以上の結果より、臨床の現場では、複数の抗てんかん薬を併用する場合が多いので、今後フェノバルビタール、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなどについて検討すべき必要性があるものと思われる。
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