研究概要 |
近年,上行系ニューロン間の化学伝達物質を含む神経活性物質とその受容体の機能を明らかにすべく研究を行った結果,それらの概要をとらえることができた.しかし,ここに下行系が,想定されている以上に密接に絡み合い,しかも提唱された回路に問題があることが判明したので本研究ではこれを解析した. 本研究計画は,麻酔ラット三叉神経脊髄路核尾側亜核と相同な脊髄後角を用いて: (1)外側・内側視床,中脳結合腕周囲領域,扁桃核等へ投射する,またはintrinsicな単一ニューロンのNK-1,α_2受容体の機能をantagonistを用いて同定した. (2)これらのニューロンの反応に対する下行抑制の効果を調べた. (3)慢性炎症性疼痛動物(CFAラット)なる動物モデルを作成して,正常動物では機能を表さない受容体や下行抑制系の修飾を調べた. その結果は: 1.麻酔下の正常及びCFAラットを用い,侵害受容ニューロンが特異的に分布する脊髄後角1層ニューロンにおける侵害入力,特にC線維入力に対するNT投与の効果,及び大縫線核(NRM)電気刺激によって生ずる下行系を介する抑制に対するNTの効果を調べた. 2.44匹のラットから合計54個のC反応を示す後角1層ニューロンを記録した. 3.CFAラットでは,C反応は減弱の傾向にあったが有意ではなかった.また,NRM刺激による抑制も有意な増強は認められなかった. 4.Yohimbineは,CFAラットのC反応及びNRM刺激による抑制に影響を及ぼした. 5.RP-67580はすべての反応を抑制した.
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