本年度は、ペプチドの三次元立体構造に関する情報に基づき、CGRP fragmentsの設計および合成をそれらの生理活性に関する予備実験データと随時付き合わせながら進行させる計画であった。しかし、合成依頼に対して業者側のトラブルから入手に手間取り、予定通りに進行していない状況である。 1)CGRP fragmentsの新規合成 海外共同研究者(Dr.Burns)のunpublished dataによるとCGRP(1-12)が弱いながらアゴニスト活性をもっているとのことから、その見かけの立体構造が類似していると想像されるCGRP(1-12)のN末端とC末端を逆にしたfragmentをまず合成した。また、CGRP(1-8)とCGRP(1-14)の合成を依頼しているが、未入手である。 2)合成CGRP fragmentsの細胞内情報伝達系に及ぼす影響 上記のreversed-CGRP(1-12)はERKのリン酸化を一時的に亢進するが、cAMPあるいは細胞内free Ca^<2+>([Ca^<2+>]i)に対しては有意な影響を及ぼさなかった。ちなみに、使用した細胞約10種類のなかでヒト骨肉腫由来MG63細胞がすべてにおいて、CGRPに対する反応性が高いこと、すなわち実験モデルとして最適であることがあらためて確認された。 3)non-RIのCGRP-受容体結合実験法の開発 RI-CGRPを使用した結合実験は、種々の問題から実行困難な状況である。そこで、CGRPを細胞膜上の結合部位(受容体)に結合させた後、DSSにより化学的に架橋形成させてSDS-PAGEとWesternblottingにより検出する半定量する方法を確立した。また、96-well plateに培養した細胞を固定して、CGRPの結合量を比色定量する方法を開発中である。さらに、本実験用にビオチン化したCGRPの合成を発注し、現在入荷待ちの状況である。これにより、CGRPと比較した新規合成CGRP fragmentsの受容体への親和性が容易に評価できるようになると思われる。
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