研究概要 |
(1)軟骨肉腫由来軟骨細胞株HCS-2/8より単離した軟骨成長因子CTGFの作用。 軟骨細胞の増殖と分化を促進することが明らかとなっている軟骨成長因子CTGFを過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。H型コラーゲンのプロモーター下流でCTGFを発現するベクターをマウス受精卵に注入し、生まれたマウスについて挿入遺伝子の有無を判定した結果、5匹のトランスジェニックマウスを得た。これらは、正常マウスに比較して矮小であり、さらに、X線撮影の結果、骨密度が低下していることがわかった。また、これらのマウスの精巣にも異常がみられた。組織における遺伝子発現について解析すると、外来性のヒトCTGF遺伝子は確かに軟骨組織に過剰発現していたが、一方で、内在性のマウスCTGFの発現や、他の軟骨関連遺伝子の発現が低下していることがわかった。 (2)マイクロアレイ法による軟骨関連遺伝子の解析 cDNA発現アレイによって、軟骨あるいは軟骨疾患に関わる遺伝子の解析を行った。その結果、変形性関節症において多く発現する遺伝子として、STAT, PKC, caspase, IGFBP、慢性関節リウマチにおいて多く発現する遺伝子としてCDC25, RHO, FGF7などを単離した。また、c-fosおよびc-junの発現も慢性関節リウマチにおいて若干上昇していた。その中で、アポトーシス関連遺伝子であるcaspase-9は、特に変形性関節症の関節軟骨組織に多く発現しており、TUNEL染色陽性組織と相関していた。従って、変形性関節症においては、Fasとは異なるアポトーシス経路が軟骨破壊に関連していることが予想され、caspase-9の発現および機能の抑制による治療の可能性が示唆された。
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