研究概要 |
本年度は、上皮付き味蕾標本を用いた局所味刺激法によりNaCl, KCl,クェン酸およびグルタミン酸ナトリウムの4種の味刺激時に味細胞から放出される物質をカーボンファイバー(CF)電極による電気化学的測定法を用いて検出することを試みた。すなわち、CF電極をCF電極装着型電気化学検出対応型パッチクランプ用増幅器に接続する。上述の標本の基底膜側にCF電極を置き、味受容膜側だけを刺激し、その際に基底外側膜側の味神経とのシナプス部位から分泌される物質をCF電極と上記増幅器とによって計測することを試みた。剥離上皮作製時および実験中を通じて持続的に酸素供給を行った。剥離上皮の粘膜側全体を生体上皮全自動灌流サンプリング装置を用いて約50回味刺激し漿膜側に分泌される物質を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定したところ、NaClおよびクェン酸刺激ではセロトニンが検出され、ショ糖刺激ではエンケファリンやコレシストキニンのようなペプチド性の伝達物質候補物質が検出された。しかし、CF電極を用いた本実験では、上記4種の味刺激の何れにおいてもセロトニンのようなモノアミン性の伝達物質候補物質は検出されなかった。現在用いているCF電極ではアミノ酸やペプチド性の伝達物質は検出できないので、免疫組織学的には味細胞にセロトニンを豊富に含有する細胞の存在が示唆されてきているにもかかわらず、本実験の結果は味細胞の伝達物質はモノアミン以外である可能性を示唆する。グルタミン酸受容体のいくつかのサブタイプの検出を免疫組織学によって試みたところ、mGluR4とiGluR4が味細胞で検出されたが、何れも味神経側では検出されなかった。NMDA型受容体は味細胞、味神経の何れにおいても検出されなかった。
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