研究概要 |
我々はラットの前交連尾側端レベル線条体中央部に、微小電気刺激および微小化学(受容体)刺激によって開口筋と下突出筋には同側優位の顕著なEMG活動を誘発するが、閉口筋、舌後退逗または顔面筋には何の活動も誘発しない線条体領域striatal jaw regionを発見した(Neurosci. Lett.,253:79-82,1998;Brain Res,893:282-286,2001)。平成14年度は本研究課題の最終段階として、解剖学者と共同して線条体顎領域SJRニューロンの線維連絡について形態学的解析を行なった。 1体の電極で微小電気刺激と微量トレーサ注入が同時に行なえる微小シータガラス管電極(先端直径25〜65μm)で誘発EMG活動を指標にSJRを同定し、SJRにコレラトキシンサブユニットB (CTb)を電気泳道的に注入した。CTbの注入部は前交連の最尾側のレベルにおいて、線条体のほぼ中央部に限局していた。逆行性標識神経細胞体は、主として(1)大脳皮質の運動野、体性感覚野、島皮質、(2)視床の内側中心核(NCM)と束傍核、(3)扁桃体外側基底核、(4)黒質緻密部に分布していた。大脳皮質からSJRへの投射繊維は主としてV層とVI層から起こり、その起始領域には二つの中心が認められた。すなわち、感覚運動野顔領域と島皮質領域である。これらの皮質領域は、電気刺激によってそれぞれ異なるタイプの連続顎運動が誘発される領域である。なお、順行性終末標識が淡蒼球外節、脚内核、黒質網様部に認められた。 以上の生理学実験は研究代表者・天野仁一朗が担当し、解剖学実験は研究分担者・里田隆博(広島大学歯学部)が担当した。研究結果はNeurosci. Lett.,322:9-12,2002に報告された。
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