研究概要 |
本年度は研究の最終年として、昨年度得られた結果を参考に検索をさらに進めた。 1.骨芽細胞における検索として、われわれが開発したコラーゲンゲル内に方埋した骨芽細胞に機械的ストレスを負荷した。負荷終了後に細胞を回収、total RNAに精製し、RT-PCR法にてNCX1遺伝子の発現の有無を検索した。細胞内Ca^<2+>イオン濃度を調節するNCX1のmRNA発現は,伸展刺激開始3日目において非伸展群に比べ伸展群は有意に増加していた。伸展群では細胞は伸展方向に対し直角に配列し,F-アクチン線維が非常に強く観察された。この細胞形態および細胞骨格の変化はSAチャネル阻害薬であるガドリニュウム(Gd^<3+>)10μM添加により抑制された。骨芽細胞においても伸展刺激による細胞形態応答には,F-アクチンの構造変化の調整にSAチャネルおよびNCXを介した細胞内へのCa^<2+>流入が重要である可能性を示唆した。 2.野生型およびNCX1遺伝子欠損マウスより造血幹細胞を調整し、活性型ビタミンD3添加下でのST2細胞と共存培養をすることで破骨細胞分化させることを試みた。すると、野生型は破骨細胞へと分化することができたが、遺伝子欠損型では分化することができなかった。このことからも、NCX阻害により、破骨細胞分化にはNCX活性が重要な役割を持つことが明らかになった。 3.破骨細胞よりcDNAライブラリーを作製し、発現するNPT遺伝子を検索した。RT-PCR法で遺伝子発現を検討したところ、腎II型NPTにより増幅されるDNA断片が確認された。これはII型NPT遺伝子のイントロンを用いるスプライシングバリアントであることが明らかになった。脾細胞では発現が認められないことから破骨細胞への分化に伴って発現が上昇することが示唆された。 われわれは、破骨細胞の分化が低Naイオン濃度の培地では抑制されることが以前報告した。Naイオン不足はイオントランスポーターの働きも抑制されることから、破骨細胞の分化にはNa^+依存性のトランスポーター群が重要な役割を持つことが示唆された。
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