レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の一員として知られるアンギオテンシンIIは、中枢神経系および末梢神経系で神経伝達物質であることが知られている。申請者はこれまで以下のことを明らかにした。 (1)アンギオテンシンII(AngII)は、ハムスター顎下神経節細胞のAT_1受容体を介して脱分極電位を発現する。(2)そのAngII脱分極は、膜抵抗の減少を伴う成分と膜抵抗の増加を伴う成分からなっている。(3)膜抵抗を減少する成分は、MチャネルとCa^<2+>活性化K^+チャネルの閉鎖によって生じる。(4)Ca^<2+>活性化K^+チャネルの抑制はAngIIによる高閾値活性化Ca^<2+>チャネル抑制の結果である。(5)ハムスター顎下神経節におけるL型、N型、およびP/Q型Ca^<2+>チャネルの割合は48、36、13%であるが、AngIIはAT_1受容体を介してL型、N型、およびP/Q型Ca^<2+>チャネルを抑制した。(6)AngIIによるCa^<2+>チャネルに対する抑制のIC_<50>は0.8μMであった。(7)AngIIによるCa^<2+>チャネルに対する抑制はカルシウムチャネルを一過性の強い脱分極刺激で活性化した後にも発現した。またこの抑制はカルシウムチャネルの電流-電圧曲線に変化をおよぼさなかった。すなわち電位非依存性様式の抑制であった。(8)AngIIによるCa^<2+>チャネルに対する抑制はG_<q/11>タイプGTP結合蛋白を介して情報伝達を行っているものであった。(9)AT_1受容体によるCa^<2+>チャネルに対する抑制は蛋白キナーゼCを介するものであり、蛋白キナーゼAとカルシウム・カルモデュリンキナーゼIIの関与はなかった。(10)蛋白キナーゼCはL型Ca^<2+>チャネルに対する抑制に関与し、N型、およびP/Q型Ca^<2+>チャネルに対してはGTP結合蛋白のβγサブユニットが関与していた。
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