研究概要 |
本研究では「組換え型ヒト唾液シスタチンの改造と実用化」を目指している。得られた研究実績の概要を以下に述べる。 (1)シスタチン(A,B,C,S,SA1,SA2)、キニノーゲン、ヒト唾液ヒスタチン5、ヒト唾液高プロリン含有ペプチド(P-C,P-D,P-H)などがヒト歯肉培養細胞やネズミ脾細胞にサイトカイン(インターロイキン6と8)を誘導する活性を保持するか否かを詳細に検討した。その結果、ファミリー2シスタチンだけに誘導活性を認めた。この活性はファミリー2シスタチンのシステインプロテアーゼ阻害活性部位とは異なる事が示唆された。(2)組換え型のヒト唾液シスタチンSA1とSA2に対するモノクローナル抗体の製造に着手した。その結果、2種のモノクローナル抗体(Cys2E5ならびにCys3F11)を作成する事ができた。Cys2E5はシスタチンSA2と極めて強く反応したが、シスタチンSA1とシスタチンCとの反応は著しく弱かった。Cys3F11はシスタチンSA1,SA2,Cのいずれとも反応した。しかし、いずれの抗体もシスタチンSや卵白シスタチンとは反応しなかった。モノクローナル抗体の作成技術はヒトの体液や細胞内に存在するシスタチンの選択的定量法の開発に貢献すると考えている。(3)組換え型シスタチンの発現分泌ベクターの構築手法をヒトアメロゲニン発現分泌ベクターの開発に応用した。即ち、ヒトのゲノムDNAを鋳型として用い、アメロゲニンのエクソン2、3、4、5、6、7をPCRで増幅した。アメロゲニン遺伝子からは選択的スプライシングによって複数のmRNAが発生することが知られている。このことを踏まえ、自由自在にエクソンセグメントを試験管内で選択して連結させることができる技法を開発した。最終的にはアメロゲニンの遺伝子セグメントにシスタチンSの分泌シグナルをコードする遺伝子セグメントを融合させたDNAをpKK233系のベクターにクローニングした。以上の様な方法によって大腸菌のペリプラスム空間に組換え型ヒトアメロゲニンが分泌されるように発現ベクターを構築した。(4)生体機能を人工素材に固定化するための基礎研究にも着手した。現在、機能性蛋白質をシリカ表面に固定化する手法を開発中である。
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