研究概要 |
本年度はヒト以外の生物から新規システインプロテアーゼインヒビターを検索して歯科医療に役立てることにも着眼した.研究実績を以下に述べる. (1)カルボキシメチルパパイン(CM)-Sepharose 4Bアフィニティークロマトグラフィーにより日本産ウナギの体表粘液から2種類のシステインプロテアーゼインヒビター(分子量13kDaと16kDa)を分画することができた.プロテインシーケンサーで分析したところ,16kDaインヒビターのアミノ末端付近のシーケンスがLys-Asn-Leu-Glu-Glu-Pro-Glu-Ile-Asp-と決定された.これらのインヒビターの等電点は何れも弱塩基性であると考えられ,パパインとフィシンを強く阻害するが,pH8付近で著しい活性低下が認められた.pH7.8に調節したウナギ体表粘液をDEAE-Sepharose CL-6B(0.02M Tris-HCl, pH7.8)に直接吸着させて分画したところ,0.1M NaClで溶出される画分にもシステインプロテアーゼインヒビターが存在していることを発見した.何れのインヒビターも100℃,10min加熱処理しても阻害活性を保持していた.現在,上記の3種システインプロテアーゼインヒビターの大量精製と完全一次構造の解析を目指している. (2)ウナギ粘液のプロテアーゼ活性を測定したところ,pH4.0-8.5の領域でZ-Phe-Arg-MCA, Boc-Phe-Ser-Arg-MCA, Boc-Val-Leu-Lys-MCAの水解活性を検出した.これらの水解活性はジチオスレートールとEDTAの存在下でも発現した.Z-Phe-Arg-MCA水解活性は特にpH4.5-5.5の領域で高く,ヒトシスタチンCやE-64で阻害されるが,組換え型ヒトシスタチンSでは阻害されなかった.この解析結果はウナギの体表粘液の中に新規システインプロテアーゼが存在していることを示唆する.ウナギ体表粘液からレクチン(19kDa)も検出され,利用価値の高い多種の蛋白質が粘液中に存在することが示唆された.現在プロテオーム解析を開始した.
|