<目的>歯周病原菌の一種であるPorphyromonas gingivalis (P. g.)のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、マンガンと鉄の何れの金属でも活性を持ち、含有する金属によってそれに応じた化学的性質を示す特徴がある。本研究は、金属配位近傍のアミノ酸残基の役割を推測し、部位特異的変異酵素を作製して金属選択性に関わる構造を検討する一方、分子進化の理論をin vitroで再現してFe-特異的SODあるいはMn-特異的SODに変化させた酵素を得ることを最終目的とした。今回は金属特異性に寄与するアミノ酸残基の特定化を行い、分子進化の方向性を探った。 <方法>P. g. SODの結晶解析結果から金属配位環境のアミノ酸残基の役割を推定し、Fe-SODに特徴的であった2つのアミノ酸残基をMn特異的SOD型に変換した酵素と、Mn-SODに特徴的なアミノ酸をFe特異的SODへ変換した酵素をKunkelの方法で導入して作製した。各変異酵素のFeおよびMn再構成酵素を調製して、野生型酵素と比較した。 <結果>FeおよびMn特異性に寄与するアミノ酸残基の特定化を行い、分子進化に必要な情報を煮詰めた。Leu 72 Trp、Leu 76 Phe、およびGly 155 Thrの3残基変異酵素は、Feに対する活性発現がMnの場合の13.4倍に増加し、3残基がP. g. SODの活性金属選択性に寄与する事が示唆された(平成12年度)。さらに個々のアミノ酸残基の役割を検討すると、Gly 155 Thrの1残基変異でFeに対する特異性が増加することを突き止め、活性中心の環境がFe特異的に変化した事を観察できた。この結果はcambialistic SODの金属特異性をFe-特異的SODに変換させることに成功した初の成果であり、既報と併せ、Fe-特異的およびMn-特異的SODの優性配列が特定できた。今後、Directed Evolutionによる定向進化させた変異酵素を得る予定である。
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