研究概要 |
(1)研究背景 骨の形成と吸収を制御する因子として、サイトカインの役割は、広く認識されているが、最近このサイトカインの情報を伝達する物質として一酸化窒素(NO)の細胞内での挙動が着目されつつある。NOはinducible NO synthase(iNOS)により生成されるが、大量に産生されると様々な細胞にたいし毒性を発揮し、最終的にアポトーシス様細胞死を惹起すると報告されている。(2)研究目的 サイトカインによる骨芽細胞(MC3T3-El cells)のアポトーシス様細胞死がどのような細胞内シグナルにて惹起されるか、特にsignal cascadeにMAP kinase(classic MAP kinase,c-jun-N-terminal kinase,p38MAP kinase)が含まれているかについて基礎的な検討を行った。(3)結果1)炎症性サイトカイン(IL-1β,TNF-α,IFN-γ)で処理することは、強い細胞増殖抑制および細胞死を示し、同時にNOを産生することを確認した。FACSを用いたAnnexin-V/PI double stainingによりこの細胞死がアポトーシスを介したものと確認した。2)サイトカイン処理によりNOが産生誘導され、これがp38MAP kinase inhibitor SB203580により抑制された。3)サイトカイン処理によりiNOS mRNAが誘導され、これがSB203580により抑制された。さらに、サイトカイン誘導apoptosisはSB203580により抑制された。以上のことからサイトカイン誘導apoptosisはp38MAP kinaseの活性化を介して起こることが示唆された。現在、実験結果を踏まえての総括的な考察及び付加的実験を行っている。結果の一部は歯科基礎医学会、JADR,IADR大会にて発表を行い、また現在論文作成中である。
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