平成12年度は、放射線照射により惹起される細胞死誘導のメカニズムを解明する目的で以下の検討を行った。 1.抗アポトーシス遺伝子導入細胞の放射線感受性に関する検討 Saos2にアデノウイルスおよびサイトメガロウイルスの抗アポトーシス遺伝子(E1B19KとUL37)を導入しTransfectantを樹立し、それぞれの細胞にコバルト60によるガンマ線照射を行った。いずれの細胞株も親株に比較して有意な放射線抵抗性を示した。この結果から、ガンマ線照射により惹起される細胞死誘導のメカニズムの一つはBCL-2関連タンパク質により制御されていること、ミトコンドリアを介した細胞死誘導が行われている可能性が示唆された。 2.遺伝子チップを用いた放射線照射による遺伝子誘導の解析 ヒト正常線維芽細胞MRC5に10Gyのガンマ線照射を行い24時間後の遺伝子発現を対照群と比較した。検索した範囲では著明なBCL-2関連タンパク質の発現上昇は認められなかった。Caspase関連ではCaspase-2、-6、-10の発現レベルがやや上昇していた。これらの結果から上記1.にて予想されたメカニズムは主にpost translationalなカスケードにより制御されている可能性が示唆された。 3.E1B19KおよびUL37が抑制するCaspaseカスケード 1.にて樹立した細胞株に種々の細胞障害因子を加え両タンパク質が抑制するCaspaseカスケードを検討した。低酸素状態において、E1B19K導入細胞ではCaspase8の活性化を介したCaspase3の活性化が抑制されていたが、UL37導入細胞ではCaspase3の活性化のみが抑制されていた。 平成13年度は、上記細胞株の放射線照射前後のCaspase活性化機構について詳細な検討を行っていく予定である。
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